エッセー第十二回:桃太郎とエベレスト

桃から生まれた桃太郎 気は優しくて 力持ち 鬼が島をば 攻めんとて 勇んで 国を 出でにけれ。

子供の頃に読んだ絵本に桃太郎のお話がありました。子供心に鬼退治にいった桃太郎が鬼から財宝を奪うなんてひどい話だと思ったことを覚えています。
桃太郎が獲得した戦利品は 金銀珊瑚綾錦(きんぎんさんごあやにしき)で、珊瑚(さんご)もお宝としてあげられています。
今回は【桃太郎】と【エベレスト】を無理やりこじつけたお話です。

金銀珊瑚綾錦
珊瑚は真珠と共に日本が世界に誇れる海の産物で古くから「金銀珊瑚綾錦」とあるように日本の宝と珍重されてきました。
古くは地中海で採れた上質の珊瑚がイタリアの港からペルシャを経由して中国に入り奈良時代に日本はこれを中国から輸入していました。珊瑚は「古渡り」という名称で人気を独占。いまでも古渡りという言葉が生きております。
ちなみに「古渡り」は「胡渡り」ともいわれます。ヨーロッパにおけるサンゴの産地は地中海ですが、古くからシルクロードを経て中国に輸入されていました。
 中国人はペルシア経由で輸入されたサンゴを、胡の国(ペルシア)からきた宝という意味で「胡渡り」と呼び、七宝の一つとして重宝しました。 
余談です。日本で食される野菜に【胡】がついたものがあります。胡瓜(きゅうり)
胡麻(ごま)、胡椒(こしょう)、胡桃(くるみ)、これらはシルクロードを通って日本にもたらされたものなので、このような名前がついたといわれています。

珊瑚とは
珊瑚とは南方の海に棲む珊瑚虫が数多く集まって群体を作り、それぞれを支えるための骨格が石灰質を分泌。それが癒着して合って樹林状になり海底に根を下ろしたものが珊瑚です。私たちが宝飾品として珍重する珊瑚は実は珊瑚虫の骨格なのです。


珊瑚虫

珊瑚は、6億年近い昔に誕生した生物で、大きく2種類に分けられます。
珊瑚虫の写真に示すように触手が6本の六放珊瑚は珊瑚礁になり、8本の触手が珊瑚はある八放珊瑚は宝飾用の珊瑚です。
珊瑚は珊瑚礁を作るものや宝飾用として珍重されるものの2種類に分類されます。


珊瑚とエベレスト
世界最高峰のエベレスト山の頂上付近には石灰岩が存在し、三葉虫やウミウリ(珊瑚の仲間)の化石が発見されています。
この事はエベレスト山の頂上付近は、以前は海の底だったということを意味しています。
世界最高峰のエベレスト山はかつて南半球にあったインド亜大陸がプレートにのって移動しユーラシア大陸に衝突。大陸衝突によって持ち上げられヒマラヤ山脈が形成されたといわれています。
南の海で成長した珊瑚の仲間が地殻変動のはてに石灰岩化し、ついにはエベレスト山の頂上付近の石灰岩になったということです。
気が遠くなるような地球の歴史を垣間見るようです。

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