エッセー第六回: 富士青木ヶ原樹海にダイヤモンドを探しに行く

ダイヤモンドの故郷


ダイヤモンドの透徹した光の輝きは見る人の心を捕らえて止みません。
ダイヤモンドは太古の火山の溶岩の中に発見されます。太古の溶岩は人参状の形をしておりパイプ鉱床と呼ばれています。
太古の火山の溶岩はやや青みを帯びた黒色の岩石でキンバーライトと呼ばれており、人々はこの岩石の中に眠るダイヤモンドを求めて活動してきました。



歴史上、最初のダイヤモンドはどこで?

 

人類の歴史で、最初に、ダイヤモンドが登場するのはインドです。インド・デカン高原で発見されたダイヤモンドは地位と権力の象徴として身につけられてきました。インド産のダイヤモンドでもっとも有名なものはホープ・ダイヤモンドとして知られている青色のダイヤモンドで、9世紀頃、インド南部のデカン高原を流れる川で、農夫により発見されたと伝えられています。45.50カラットのブルー・ダイヤモンドは名前のホープ・ダイヤモンドとはうらはらに『呪われた宝石』として持ち主を様々な不幸に陥れた過去を持ち、現在、アメリカ・スミソニアン博物館に所蔵されております。

本日の主題 富士青木ヶ原樹海にダイヤモンドを探しに行く


ダイヤモンドは地下深くの灼熱のマグマの中で成長し、地表に噴出した溶岩の中に含まれています。
日本は世界に名高い「火山の国」で日本列島は火山の噴出物で出来ているといっても過言ではありません、
たとえば、東京は富士山の噴出物の火山灰で厚く覆われている大地の上に存在しています。
そこで、落語風に話を進めますと

長屋のハチ公:
大家のだんな、ダイヤモンドは昔の火山の溶岩の中にあるらしい。
ちょっと、富士浅間神社にお参りして家内安全商売繁盛をお祈りしてこようと考えたんだ。ついでに富士青木ヶ原樹海の溶岩の中からダイヤモンドを探し一攫千金と洒落込もう。ついては富士のお山までのお足を貸して。

 

大家:

お前、何を寝ぼけたことを言ってるんだ。お足なぞ貸せないよ。
そんな馬鹿な寝物語を言ってないで、稼ぎに行ってきな。

 

長屋のハチ公:

大家と店子と言えば親子も同然。あっしが富士のお山の溶岩からダイヤモンドを見つけたら御大尽だ。大家のだんなにもおすそ分けをするから、お足を貸してくださいよ。

 

大家:
やい、ハチ公。ダイヤモンドは大陸楯状地帯に存在する大昔の火山の溶岩の中にあるんだ。インドとか、アフリカ、シベリアなどにはダイヤモンドを含む大昔の火山の冷えて固まった溶岩中にはダイヤモンドが入っている事もあるが、富士のお山の溶岩の中には、ダイヤモンドのかけらもないんだよ。
いいかい、ダイヤモンドはハチ公が立っている地面から200キロ以上深いところのマグマの中で成長しているといわれているんだ。
残念ながら富士のお山の溶岩の中にはダイヤモンドは入っていないよ。

 

長屋のハチ公:

同じ溶岩じゃないか。
インドの溶岩にはダイヤモンドが入っていて、富士のお山の溶岩の中には入っていないというのか。

 

大家:
絵を見てごらん。日本の溶岩は北米プレートがユーラシアプレートにもぐりこみ、その時の摩擦熱でマグマができて、噴出するというわけだ。だから、ダイヤモンドが成長する地下200キロメートルから吹き出る溶岩ではないのだよ。だから、日本の火山の溶岩にはダイヤモンドは存在しないと言う事だ。
分かったら、さっさと稼ぎに行きねい。まっとうに働けばダイヤモンドも手に入るという寸法だ。
まっとうに稼いで母ちゃんにダイヤモンドの簪でも買ってやれ。

という事で、ハチ公の夢は消えてしまいました。
石炭と同じ炭素で出来ているダイヤモンドが、地下200キロメートルの灼熱の
マグマの中で成長している。それが大昔の火山活動で噴出した溶岩の中に存在
しているとは、不思議な話です。

 

 

 

風信子(ヒヤシンス)

0