エッセー第七回: 夏の風物詩 “蛍の光”と宝石の蛍光

夏本番を迎え、各地から蛍の便りが寄せられる候となりました。蛍の光というと卒業式を思い出しますが、もちろん、これは蛍の光や窓から差し込む雪明りで勉強するという歌詞で、卒業式に歌われました。中学校の卒業式にこの歌を歌いながら、蛍の光や窓の雪明りで本が読めるわけがないなどと思った記憶があります。



“蛍の光”ではなく“蛍光”とは

 

ある物体に入った光が、物体の内部で変化して波長の長い光として出現する現象を蛍光現象と呼び、そのときに出てくる光を蛍光と呼びます。
私たちの身の回りにはこの蛍光現象を利用したものが沢山あります。蛍光灯もそうです。
いまは液晶テレビに置き換わりましたが、ブラウン管テレビも蛍光現象を利用して映像を出していました。
ちょっと前の衣類の洗剤には「蛍光増白剤」というものが入っていました。蛍光増白剤入り洗剤で選択したシャツをきてディスコ(古いですね)に行くと、照明でシャツが青白く蛍光を出し、ちょっと驚いたものです。最近の洗剤には蛍光増白剤を入れていませんと、わざわざ表記しているものもあります。(写真参照)

 

“蛍の光”は “蛍光” ではない


蛍の光はルシフェリンという物質をルシフェラーゼという酵素で酸化させるときに発光させているといいます。ですから、蛍の光は蛍光ではないのです。蛍は熱を出さないで光るので物質が示す蛍光現象も熱を出さないで光るので、似ているという事でこのような定義になったのかもしれません。
白熱光電球の光から、蛍光灯の光になり、省エネルギーという事でLED電球が脚光を浴びています。いつの日か、超エネルギーの照明として、本物の“蛍光灯”が発明される日が来るかもしれません。


ダイヤモンドの蛍光


ダイヤモンドに紫外線(眼にみえない光)があたると、眼に見える光となって出てくる場合があります。この眼に見える光を【蛍光】と呼びます。
自然界で産するダイヤモンドはかなりの割合で紫外線による蛍光を示します。
蛍光の大部分は【青白色】で、稀に緑色やオレンジの蛍光を示すダイヤモンドもあります。
蛍光の強さは、【かすかな青白色】から【鮮やかな青白色】まで様々です。
暗闇の中でダイヤモンドに紫外線をあて、青白色に輝くダイヤモンドを見ると神秘的な感を持つでしょう。



ルビーの蛍光・エメラルドの蛍光


宝石は様々な蛍光を出します。
真っ赤に燃えるような赤色の宝石・ルビー。コランダムという無色の結晶にクロムと呼ばれる金属がごく僅かに含まれると、あのような真紅の色の宝石が生まれます。この宝石も紫外線を受けると「燃えるような赤色」の蛍光を出します。血がたぎるような真紅のルビーは7月の誕生石で、熱情・情熱・純愛がルビーの石言葉です。
緑色の宝石・エメラルドも紫外線を受けると「燃えるような赤色」の蛍光を出します。ルビーと見間違うような赤の蛍光は緑色宝石・エメラルドとは思えないような光です。皆さん、ぜひ、機会を見つけてダイヤモンドの青白い蛍光や、ルビーの燃えるような赤色蛍光、素顔のエメラルドからは想像できないような赤い蛍光をご覧になってください。

 

風信子(ヒヤシンス)

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