エッセー第十七回:隕石がもたらしたダイヤモンド

2013年2月15日に起きたロシア・チェリャビンスク州の隕石落下事件は世界中に衝撃を与えました。
幸い、大きな被害は発生しませんでした。隕石衝突は地球誕生以来無数に起きている事だそうです。6500万年前にメキシコのユカタン半島近くに直径10キロの小惑星(隕石)が衝突しました。隕石衝突で発生した大津波と気候変動が繁栄していた恐竜を絶滅させたといわれています。
現在も小惑星が地球に衝突する可能性は否定できず、実際、地球に近づく小天体を発見し、軌道を決め、情報を国際共有する活動は「スペースガード」と呼ばれ監視活動を行っています。
このような隕石落下は地球にさまざまな現象を引き起こしますが、その中で宝石に関する事をお話します。
ダイヤモンド
ダイヤモンドは200キロメートル以上深いマントル層で形成されるといわれています。地下深くで成長したダイヤモンドを含むマグマが、地表に噴出して火山となります。ダイヤモンドは冷えて固まった溶岩の中に存在します。
ダイヤモンドが冷えて固まった溶岩の中に存在するためには、時速200キロ以上の高速で地表に噴き出る必要があります。ゆっくり地表に上昇するとダイヤモンドは途中で溶解し、マグマが地表に噴き出た時はすっかり消えてしまいます。
このマントル層からダイヤモンドが噴き出るきっかけを『隕石』が作ったといわれています。隕石が衝突し地殻に亀裂が生じ、その亀裂からダイヤモンドを含むマグマが噴き出したといわれています。
ダイヤモンドが地上に存在するのは隕石のおかげだという事になります。
衝突ダイヤモンド
ロシア・シベリア地区にはダイヤモンドを含む可能性があるパイプ鉱床が200か所あるといわれています。現在、ダイヤモンド採掘されているのはその内2か所で、高品質のダイヤモンドが多いのです。
そのロシアに驚異的なダイヤモンド埋蔵量をもつポピガイ・クレータがあります。
このクレーターには3000年分の消費量に相当する膨大なダイヤモンドが存在するといわれています。残念なことにポピガイ・クレータのダイヤモンドは宝石品質のものではなく、工業用の品質だといわれていますので、世界のダイヤモンド業界も一安心という事です。
このポピガイ・クレータのダイヤモンドは、隕石が衝突した衝撃で形成された
【衝突ダイヤモンド】といわれ、一般的なダイヤモンドより2倍の硬さを持つといわれています。
ポピガイ・クレータ
そして最後に隕石がもたらしたものに宝石ではありませんが石油があります。
アメリカのエイムズ・クレーターと石油
アメリカのエイムズ・クレーターではクレーターを同心円状に囲むように石油掘削リグが存在しアメリカ有数の産出量を誇る石油産地です。このように巨大な隕石が地球に衝突してクレーターとなった場所から石油が発掘されることがあります。隕石に石油が入っていたわけではなく、隕石がぶつかった衝撃で地球の奥深くで石油が眠っている岩盤がくだけて、奥に広がっている石油が岩盤の割れ目から染み出し、石油をトラップする構造を作ったと推定されています。
このように巨大隕石が石油をもたらしたわけです。
シェールガス採掘とダイヤモンド
最近、アメリカに空前の天然ガスと石油をもたらしているシェールガス、シェールオイルは隕石の衝撃で岩盤を砕くのではなく、人間が岩盤にドリルで穴をあけ、
高圧水で岩盤を砕き、岩盤に含まれていたガスや石油を回収しているのです。
このダイヤモンドはシェールガス採掘と面白い関係があります。
地下深くの岩盤に穴をあけ、次いで水平に掘り進み穴をあけていきます。
この穴をあける最先端のドリルヘッドにダイヤモンドが用いられているのです。
アメリカのシェールガス採掘のヘッドには天然ダイヤモンドより硬いスーパーダイヤモンドと呼ばれる「合成ダイヤモンド」が用いられております。
地下深くを掘り進むドリルヘッドが硬い岩盤にあたり損傷するとヘッド交換に非常な時間がかかります。それを避けるために硬いスーパーダイヤモンドが用いられているのです。
日本のスーパーダイヤモンド
愛媛大学の入舩教授は天然ダイヤモンドより遥かに硬い多結晶構造の人工ダイヤモンドを作りました。
わたしは、入舩教授が作った合成ダイヤモンドを用いたドリルで、日本近海に眠るメタンハイドレードの採掘がおこなわれるのを期待しています。