エッセー第十四回:「書けば良いというものではない」情報公開とは

昨今、情報公開ということで商品に関するいろいろな情報が盛りだくさんに表示されるようになっています。
食品を例にとると原産国、消費期限、原材料、添加物、カロリーなどの栄養表示、等々、もちろん、表示することは大事なことです。
私の家の冷蔵庫にあるハムの表示を見てみましょう。

 

 

原材料名
豚肉、豚脂肪、還元水あめ、食塩、たん白加水分解物(ゼラチンを含む)、香辛料、砂糖、調味料(アミノ酸)、リン酸塩(Na,K)、保存料(ソルビン酸)、PH調整剤、酸化防止剤(ビタミンC)、発色剤(亜硝酸Na)
本品は卵、乳、小麦、牛肉、大豆、鶏肉、りんごを含む他の製品と共通の設備で製造しています。

これを読んで何が分かるのでしょうか。何だか分からないがいろいろなものが入っており、保存料や発色剤などの添加物が入っている。
そして【本品は╌╌╌╌╌】以降は卵や小麦、乳、大豆等の成分が混入している可能性があるから、これらのものにアレルギー反応を持つ方は注意してください。
というように読み解くことが出来ます。
食品として販売しているのですから安全なものなのでしょうが、保存料(ソルビン酸)やPH調整剤、発色剤(亜硝酸Na)等は【うさんくさい】感じを持ちます。

今回は食品の表示をテーマとしているのではありません。
宝石の表示にもこの食品表示と似た表示が行われており、消費者が宝石について理解できないもしくは誤った理解に導くような表示法が行われております。

宝石の処理
神秘的な光や色彩をもつ宝石ですが、産出される宝石の大部分は色や透明感等に難があり、そのままでは美しい宝石とは思えないものです。もちろん、ごく僅かですが、磨いただけで素晴らしい光と色を示すものもあります。
現在、流通する宝石には様々な人為的な処理が行われています。宝石業界ではこの人為的な処理の実態を消費者に伝えるために、宝石の表示法を定め情報公開に勤めています。
このことは非常に良いことで推進すべきことです。

 

宝石の表示法
ルビーを例にとって現在の表示法を簡単に説明すると① 宝石の鉱物名 たとえば、ダイヤモンドは鉱物としてもダイヤモンドですが、ルビーは鉱物としてはコランダムと呼ばれます。
ルビーは  【 鉱物名 コランダム 】と表示されます。
②宝石名   【 宝石名 ルビー 】と表示されます。
③コメント 宝石に行われる人為的な処理を記載もし、このルビーに透明が物質が入っていると【透明材の含浸を認む】と表示されます。
まとめますと、隙間にガラスのようなものが入っているルビーがあると、このルビーの表示は


宝石の鉱物名  コランダム
宝石名       ルビー
透明材の含浸を認む
となります。 


隙間に鉛ガラスを含浸させたルビー

68,000円の3CTの天然ルビーが1万円という広告を見てください。
「赤い宝石の女王」と称される天然ルビーの魅力をさらに際立たせるために含浸処理を施しました。と説明が付けられています。
このルビーは亀裂が沢山存在するルビーに鉛ガラスを含浸させ、外観を驚くほど良質のルビーに変化させたものです。もしくは多数の小粒ルビーを鉛ガラスで固めたものです。
含浸させた鉛ガラスは時間の経過とともに、はがれが生じ、白く変化して行き、最初の透明感と色調は失われてしまいます。



このようなルビーであるというような情報は広告の中には記載されていません。
しかし、この広告は宝飾業界が定めた宝石の記載法に準拠しているのです。
ここで、表題の【書けば良いというものではない】ということになるのです。

この表示法は
宝石に行われている処理については説明しました。
これを買うのは消費者の自己責任です。
という考え方に通じるものです。確かにその通りですが。一般的に消費者が【透明物質の含浸を認む】という意味を理解できるとはとても思いません。
冒頭のハムの表示に対して、食品として販売しているのですから安全なものでしょうが、保存料(ソルビン酸)やPH調整剤、発色剤(亜硝酸Na)等は【うさんくさい】感じを持つのが普通でしょう。
【透明物質の含浸を認む】という表示もうさんくささを感じるかもしれませんが天然ルビーと表示されているので、購入なさる消費者も多いと思います。
ちなみにハムに使用される発色剤(亜硝酸Na)は発がん性が指摘されています。


どのような処理が施されたルビーであるか、経年変化はあるのかというような情報を消費者に伝えていくべきです。

宝石の鉱物名 コランダム
宝石名      ルビー
            透明材の含浸を認む

これでは書けばよい。ちゃんと消費者に【このルビーについて情報公開】しました。近い将来赤いルビーが白くなっても知らないよ。
このルビーの広告には前述しましたが 「赤い宝石の女王」と称される天然ルビーの魅力をさらに際立たせるために含浸処理を施しました。と説明が付けられています。

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