エッセー第五回:福島原発とマンモス

放射性よう素・セシウム・ストロンチウム

 

福島原発の事故は大きな衝撃を与え、どうなるのだろうと日本国民は固唾を呑んで、原発事故が収束することを見守っています。
原発から漏れ出た放射能の情報は、政府・東京電力が少しずつしか公表していないのが現状です。新聞では放射性ヨウソの数値が少しずつ発表され、最近はセシウムに関する数値も公表されだしています。
放射性ヨウソは半減期(半分になるのに必要な時間)が非常に短いので、仮にほうれん草に付着しても、収穫され私たちの食卓に並ぶ頃にはほとんど無視してよい状態となるのです。
しかし、放射性ストロンチウムに関しては故意か否かは判らないが、ほとんど発表されていません。
皆さん、この放射性ストロンチウムは非常に危険な存在です。骨などに蓄積しやすいストロンチウムはセシウムと違って一度体内に取り込まれると排出されにくい。これから少しずつではあると思いますが、報道されてくると思いますので注視しましょう。
象牙かマンモスの牙か判別が困難
さて、宝石のコラムでなぜ、原発事故とストロンチウムの話をするかと申しますと。
象牙がネックレスとかブローチ、印鑑等に使われていますので、広い意味で宝石に入れても良いのではと考えました。
象牙はワシントン条約で取引が原則的に禁止されております。そこでシベリアのツンドラ地帯に眠るマンモスの牙が象牙の代わりとして使用される例があります。牙の状態で輸入されれば象牙かマンモスの牙か判別できますが、印材やアクセサリーに加工してあると、判別が困難となります。
どうやって、マンモスの牙と象牙を区別するのかと申しますと、牙中に含まれるストロンチウムの量で区別するのです。

 

 

 

ストロンチウムの特性

 

ストロンチウムは化学的にカルシウムと似ていて、体内に入ると骨にたまる傾向があるので、牙にもストロンチウムが蓄積されているのです。ストロンチウムが骨中に蓄積される量は、その動物が生きているときの気温に関係するといわれ、温度が高いほどストロンチウム蓄積量が大きくなる傾向があります。
マンモスが生存していた時は気温が低い気候だったのに対して、現世の象は温暖な環境で生きていますので、骨や牙に蓄積されるストロンチウム量はマンモスの牙より多いので、これを調べればマンモスの牙か象牙なのかが判別できるわけです。
ストロンチウムが化学的にカルシウムと似ていて、体内に入ると骨や牙に蓄積されやすいという性質を利用して、マンモスの牙か象牙かを区別できるのですが、この性質が原発事故で放出されたストロンチウムが我々の骨に蓄積しやすいという、大きな懸念材料になるのです。
象牙やマンモスの牙に含まれるストロンチウムは原発から放出されたストロンチウム90とは違い、放射線を出したりしないので安心して象牙やマンモスの牙のアクセサリーを楽しんでください。

 

 

風信子(ヒヤシンス)

 

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